表参道の銕仙会能楽研究所で「銕仙会青山能<9月>」を鑑賞しました。
能は「松虫」。
谷本健吾さんの演じられる前シテは、直面の里の男。
抑えた表情で友の死について語る男の悲しみが、ひしひしと伝わってきます。
後場で男の亡霊になると、若男の面で登場。
終演後に地頭の馬野正基さんが小講座で解説下さいましたが、通常は金環を填めた三日月や痩男の面を使うそうですが、この曲のたおやかさや叙情的な雰囲気には、目に金環を填めて怨霊や幽霊などを表した面より、合うのでは?との解釈で、若男を使用したとのこと。
至極納得の解説で、亡き友を偲ぶ男の亡霊の、友への懐かしさや深い思いが、美しくも艶やかに感じられる、情緒溢れる面の表情と舞に心を奪われました。
なかなか秋らしくならず蒸し蒸しと暑い日つづきの日の中、観能中の舞台には、松虫の鳴く淋しくも美しい秋の空気の野原が広がっていました。