国立劇場小劇場で上演中の九月文楽公演の第一部「生写朝顔話~しょううつしあさがおばなし~」へ行ってきました。
「露の干ぬ間の朝顔を~」の琴唄や、「宇治川蛍狩りの段」などに惹かれた今回の演目。
歌舞伎では、すれ違いばかりの悲恋物語は、あまり好みに思えず、進んで観てみたいとは思わないのですが、人形浄瑠璃ならたのしめるかも?との期待を持って。
とは言え、この演目は歌舞伎化の方が先で、講釈師の司馬芝叟が中国の明清戯曲を題材にした長唄「蕣~あさがお~」を原典に書かれた読本「朝顔日記」を歌舞伎化し「生写蕣日記」として上演し、その後改作として「けいせい筑紫つまごと」が上演され、人形浄瑠璃としては、その19年後に山田案山子の脚色で「生写朝顔話」として初演されたのだそう。
生身の人間が演じていると、現実的に思いすぎてしまうことで、生々しく感じすぎてしまい、個人的には受け入れ難く感じてしまうお話が、人形で観ることで、期待通りに、深雪の艱難辛苦を重ねても、なお一途な姿を愛おしく思うことが出来、お話に入り込んでたのしむことが出来ました。
文楽では初めて観るチャリ場「嶋田宿笑い薬の段」での、萩の祐仙がお茶を点てる姿も、人形ならではの可笑しみがたのしい一幕。
きちんとしたお茶のお作法を知っていたら、もっとたのしいのだろうな?とやはりさわりだけでもいちどお茶を習ってみたいな、という気持ちにも。
文楽鑑賞初心者なりに、自分なりの人形浄瑠璃の不思議と魅力を感じられた、素敵な舞台でした。