夏になると一度はお豆腐を取り寄せます。
お気に入りのお豆腐屋さんが二軒あって、今年はその内の一軒、根岸にある「笹乃雪」さんの絹ごし豆富を取り寄せしました。
京の初代主人が絹ごし豆富を発明し、元禄四年に上野の宮様(百十一代 後西天皇の親王)のお供をして江戸に移り、水のよい根岸に豆富茶屋を開いたのが、笹乃雪さんの始まり。
いまもその当時のそのままの製法で、井戸水を使い、濃度の高い豆乳をにがりだけで打つ難しい技法で作られているそうです。(以上斜体部分、笹乃雪さんの栞より)
豆の味が濃くて甘く、何も付けずに戴いても十分に美味しいのですが、お塩を少しだけ、生醤油を少しだけ、最後に薬味をたっぷり、と四段階でたのしむのが私のお気に入りの食べ方です。
江戸時代の享和三年(1803)頃には、江戸市中の豆腐屋は1000軒を超えていたほど、庶民に親しまれた豆腐。
天明二年(1782)に刊行された「豆腐百珍」と言う100種の豆腐料理を紹介した本が大流行し、続編や類似本の流行を招いた事は、良く知られています。
お豆腐は調理法でさまざまな味わいを出せる便利な食材だからこそ、その後300種以上の料理法が当時の人々に知られる事となったのでしょうが、こんな濃くて美味しいお豆腐だったら、凝った調理をしなくても、毎日食べても飽きないなあ、と、思うのは、現代人の私の夏に一度ほどのお取り寄せだからでしょうか?